交通事故

交通事故を起こした加害者は民事責任のみならず、場合によっては刑事責任も負う可能性があります。もっともここでは主に民事責任について触れることにいたします。

交通事故に遭われた場合、被害者は、加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることができます。他方で、加害者は、交通事故(不法行為)と被害者のケガ(損害)との因果関係を争ったり、過失相殺を主張する等して、賠償額の減額を試みることになります。

どちらの立場にしても、示談交渉や訴訟に備えて、事故後にどのような行動をとることが適切なのか、また、自分で解決する場合と、弁護士に依頼する場合でどのような違いが生じるのかも、併せて確認しましょう。

第1 交通事故に遭ったら、何をするべきか

1 すぐに警察に通報する

警察に通報することで、事故状況の見取り図等を作成してもらうことが可能です。後にお互いの過失の割合を判断する場合等に役立ちます。

また、事故直後から痛みがあったり、負傷していることが明らかであれば、人身事故として届出を出しましょう。

2 事故についての情報を集める

⑴ 加害者の個人情報

加害者の名刺や運転免許証から、運転者の名前、住所、勤務先等の情報を集めることができます。加害者が任意保険に加入していない場合、保険会社ではなく、加害者本人に損害賠償請求することになりますので、必ず加害者についての情報を確認しましょう。

⑵ 車の所有者の情報

加害者車両のナンバーや車検証から、車の所有者が分かります。加害者と所有者が異なる際に、所有者に対しても自動車損害賠償保障法に基づく損害賠償請求が可能になる場合があるので確認しましょう。

⑶ 加害者の保険の情報

加害者が自賠責保険に加入しているか、どこの会社の任意保険に加入しているか確認しましょう。特に、任意保険に加入しているか否かは、今後の損害賠償金の回収可能性に大きく関わるものなので、確認しましょう。

⑷ 加害者の説明

加害者が、事故当時に行った説明は、後に内容が変わることも珍しくありません。加害者の説明をメモしたり、録音したりするなどして記録しましょう。

3 現場・現場周辺の状況を確認する

⑴ 車の破損状態

事故当時の現場状況や車両の破損状況は、事故態様や、事故が被害者に与えた影響を推測させる証拠になります。スマホでもいいので、事故現場や事故車両の写真を撮影しましょう。

また、事故で損傷した車を修理・廃車する前にも、破損状況が確認できるように写真を撮影しましょう。

⑵ 事故の目撃者

事故後に、事故の態様が争われる場合に備えて、事故現場に目撃者が居ないかを確認しておきましょう。目撃者が居る場合には、目撃者の連絡先を確認しましょう。

4 病院を受診する

事故から数日以上経って受診した場合、交通事故と怪我との因果関係が争われる場合があります。できる限りはやく病院を受診しましょう。また、受診の際の明細や領収書は損害を証明する証拠になるので、保管しておきましょう。

第2 弁護士に依頼するメリット

1 損害賠償額を適正な基準(裁判基準)で算定できる。

交通事故における損害賠償額は「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」という3つの基準により算定されます。

「自賠責基準」は自賠責保険会社が算定する基準です。自賠責保険は被害者に対する最低限の保障という役割を担っていますが、基準は低額に抑えられています。

「任意保険基準」は任意保険会社が算定する基準です。基準は非公開で、また各保険会社によって基準が異なります。しかし、一般的には自賠責よりは高額な基準であるものの、裁判基準よりは低いということが多いです。

「裁判基準」は、裁判となった場合に利用する「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」に基づき算定されます。一般的には裁判基準に基づいて算定する損害賠償額が最も高額になります。

参考として、交通事故による後遺症の慰謝料を請求する場合、自賠責基準と裁判基準でどの程度の差があるのかを下の表を確認してみてください。

等級自賠責基準裁判基準差額
1級1100万円2800万円+1700万円
2級958万円2370万円+1412万円
3級825万円1990万円+1161万円
4級712万円1670万円+958万円
5級599万円1400万円+801万円
6級498万円1180万円+682万円
7級409万円1000万円+591万円
8級324万円830万円+506万円
9級245万円690万円+445万円
10級187万円550万円+363万円
11級135万円420万円+285万円
12級93万円290万円+197万円
13級57万円180万円+123万円
14級32万円110万円+78万円

私たち弁護士は、代理人として保険会社との交渉を担当する場合、高額な「裁判基準」に基づいて損害賠償額を算定し、その金額をベースに交渉いたします。

2 弁護士に示談交渉を任せることができる

加害者が任意保険に加入している場合、保険会社から被害者に連絡が入り、示談交渉が始まります。交通事故の示談交渉では、専門用語が飛び交うこともしばしばあり、保険会社の説明がよくわからないという事態が生じ得ます。また、保険会社側は裁判基準と比べて低額な任意保険基準での示談を求めるため、被害者としては心無い対応を取られたと感じる場面もあります。

弁護士に示談交渉を任せれば、示談交渉から生じるストレスを回避することができます。また、専門的な用語も、弁護士が分かりやすく説明するため、交渉の進捗や賠償金の見通しも正確に把握することができます。