労働紛争

第1 はじめに

1 進め方

労働紛争は、

  1. 今後も従業員として働き続けたいのか、
  2. 退職も考慮し、訴訟等を用いて会社などと全面的に争うのか、

依頼者の要望を確認する必要があります。

①②によって争い方が変わってくるからです。

2 ①今後も従業員として働き続けたい場合

協議や労働審判手続を用いて迅速・穏当に解決を目指すことになります。

労働審判手続とは、個々の労働者と事業主との間の労働関係のトラブルを,その実情に即し,迅速,適正かつ実効的に解決するための手続です。

訴訟手続とは異なり、非公開で行われ、原則として3回以内の期日で審理を終えることになっているため,迅速な解決が期待できます。

3 ②退職も考慮し、訴訟等を用いて会社などと全面的に争う場合

訴訟等を用いて会社などと全面的に争う場合、できるだけ有利にすすめるために、いつ退職するのかは極めて重要です。また、証拠の収集もより重要になってきます。特にこのような場合は、退職を考慮しているが上司や会社には何も伝えていない段階で、専門家である弁護士と事件の進め方などを相談する方がよいでしょう。

4 証拠

労働問題では次のようなものが証拠になります。

⑴ 労働条件に関するもの

雇用契約書、就業規則、労働条件通知書など

⑵ 残業代請求に関するもの

労働時間管理記録(タイムカード)、業務記録、勤務日報、給与明細など

⑶ ハラスメントに関するもの

診断書、メール、録音など

第2 残業代請求

労務提供の対価として、賃金は当然支払わなければなりません。

労働時間に見合った賃金を受け取っていなければ、未払い分の支払いを請求することができます。

請求するには、残業等していることが分かる証拠が重要です。

これでないといけないということはありませんが、タイムカード、業務日報、メモなどが証拠となります。

注意点として、2020年3月31日までに支払う必要があった残業代については、消滅時効により2年経過すると請求できなくなります。もっとも、法改正により、2020年4月1日以降に支払う必要が生じた残業代については、消滅時効の期間が3年に延長されました。

第3 解雇

解雇とは、使用者によって一方的に労働契約を解約することをいいます。解雇にはいくつかの種類がありますが、どのような解雇であっても、一定の要件を充たさない解雇は無効です。

無効な解雇かどうかは、法律的な判断であるため、まずは専門家に相談された方が良いでしょう。

第4 退職

辞めるなら代わりの人材を見つけてから、今辞められたら困るなど様々な理由をつけて会社が退職させてくれない場合があると思いますが、このようなことは許されません。

自分が就業先と交渉するという心理的負担なく、迅速に退職することを望む場合、弁護士に依頼するのも手段の一つです。

弁護士であれば、退職を適切にサポートするとともに、付随する法的問題に対処することが可能です。

第5 職場におけるハラスメント

職場におけるハラスメントとして、セクハラ・パワハラなどがあります。

現在は、中小企業を含めた事業主に対し、いわゆるパワハラ防止法により、パワハラ防止のための適正な施策の実施、また、従業員からパワハラの訴えがあった場合の速やかな調査等の対応が義務付けられています。

セクハラとは、職場における相手方の意に反する性的な言動による嫌がらせをいい、パワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいうとされています。

このような文言をみると、職場における嫌がらせがセクハラやパワハラなどに該当するのか判断するにあたり、法律的知識が必要不可欠です。

また、職場における嫌がらせは、証拠が残らない形でされることも多く、特に証拠をどのように確保するのかということが重要になってきます。

これらのことからすると、もし自分が嫌がらせを受けていると感じたら、できるだけ早期に弁護士に相談するのが良いでしょう。