労働紛争ですが、弊所は労働者側の依頼がほとんどです。
労働問題が紛争化する前に、弊所の顧問先の事業所様には事前に相談いただき、違法な対応にならないようにアドバイスさせていただきます。弊所の顧問先の事業所様は弊所のアドバイスに誠実に対応して下さるので、労働問題が法的紛争にまで発展することは今までありませんでした。したがって、労働者の方の個別の依頼により、労働者側の代理人として事件処理をすることが多くなるということになります。しかし、労働者側の代理人はなかなか大変です。
大変な理由は①証拠が使用者側に偏在していること、②手持ち証拠が少ないこと、③証拠の収集が困難なこと、という構造的な問題だけでなく、④労働者(依頼者)の弁護士に対する依存性が高いこと、⑤依頼者が独善的であること、という依頼者側の特性もあります。
①は一般的であり、③は①を受けてのものです。②については、相談に来られた際に証拠がほとんどなく、立証しようがないことがあります。この時点で、在職しており、使用者、もしくは使用者側の者が、依頼者の不満に気づいていない場合であれば、ここからの証拠収集も考えられますが、既に退職していたり、既に労働問題についての不満を明らかにしている場合には将来的な証拠確保の可能性も低く、紛争解決の方針さえ立てることができません。
依頼者側の特性としては、④既に精神的に不安定になっており、依頼を受けた後に頻繁に報告を求めたり、訴訟方針についても細かく指示をしてきたりされる方が他の訴訟類型と比べて格段に多いです。そして、⑤との関連では、法律論を離れて自分はこんなに酷いことをされているので報われてしかるべきであるとか、なぜ裁判所は分かってくれないのか、裁判所は不公平であるとか、訴訟の構造や立証責任の問題を説明しても十分理解せず、不満をぶつけてこられる場合が他の訴訟類型と比べても格段に多いです。したがって、未払残業代の請求などの典型的な労働紛争については対応している事務所は多いものの、個別の面倒な労働紛争を受ける事務所は少なく、弊所にはそういった相当手数のいる複雑な事件が多く持ち込まれます。
ただ、上述の点を十分理解して下さる依頼者はほとんどおられないというのも、労働問題に関して代理人として受けにくい点です。
しかし、労働問題は日常的に起こりうるものであり、解決が必要な問題です。早期に解決することが必要な問題でもありながら、現行法規では十分に対応できておらず、なかなか悩ましいところです。
弁護士 山田