M&Aのプロセスは複雑ですから、M&Aを実施する場合、仲介会社等に調査や手続きを依頼するケースが多いと思います。しかし、仲介会社による調査が十分であるとは限りません。
実際に以下の事例がありました。
A社(買手)が、仲介会社(C社)に依頼してM&Aを実施し、B社(売手)を購入しました。当然購入の際には、A社はC社からB社の調査結果の報告を受けています。しかし、購入後、電気工作物の不備や実質的な商品価値のない滞留在庫等、仲介会社からの報告からは予測できないマイナスの事情が発覚しました。また、B社の日常的に行なっていた取引でさえ、代表の裁量により大きな損害を生む危険性のある取引がなされていました。
仲介会社は項目を定め、一般的調査を行うのが通常ですが、上記の事情はいずれも一般的な調査では発覚しない事情でした。しかも、仲介会社は売手に売却を渋られないよう買手に対し、売手の責任を軽減する内容の契約を締結するよう求める場合もあります。
本事案の場合、C社の調査では上記の事情が発覚せず、しかも責任を軽減する内容の条項があったため、売手に損害賠償しうるかも明確ではありません。
このことから、買手側としては、最終契約書締結の前に十分な調査を行なっておく必要があります。仲介会社は、買い手側の代理人ではありません。買い手の利益を図るのではなく、十分な調査をし、適切な評価を行い、M&Aをサポートするのが仲介会社の役割です。また仲介会社によっては売買価格により報酬を定めるところがありますが、そのような形で報酬額を決める場合には売買価格をできるだけ高くするため、あるいは売買契約を実現するため、買手に対し、売手の不利益な情報をなるべく開示しないというインセンティブが働く可能性もあります。
他方、弁護士は、買い手側の代理人として、買い手の利益の最大化を目指して仕事を行います。仲介会社の調査等が適切なのか、M&A契約の内容が買手に著しく不利益なものになっていないか等を確認するために弁護士を入れる実益は大きいです。対象会社の調査段階、契約締結段階、そもそもM&Aを迷っているような段階でも、一度、買い手の味方となり得る弁護士にご相談ください。
弁護士 黒岩